ホキ美術館 ~無数のLED照明~

日本初の写実絵画専門美術館、ホキ美術館が千葉市にオープンしました。

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■ シームレスな空間と小さな無数の点照明

繊細に緻密に描きこまれた細密画、その作品世界とじっくり向き合えるよう空間は非常に抽象化されています。空間の境界、天井・床・壁などの目地やピクチャーレール、絵画を吊るすワイヤーなど一切ありません。

そんな'徹底的にシームレス'な空間において、一般的な美術館照明(ライティングレール&スポットライトなど)は明らかに異物で邪魔物。「小さい光源が天井に無数にあって絵画のみを照らす」というイメージから計画はスタートしました。

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空間はストーリーをもって変化し濃密な絵画展示が展開されてゆくのですが、照明手法は単一です。天の川のように配された天井のLEDが時に10~30台を動員して絵画を照らしています。下図は実施設計時の配灯図、展示計画に合わせて無数に点を打ちました。 

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■ 展示照明としてのLEDの光の評価

LEDはどんどん明るさを増し色味もきれいになってきました。また価格もだいぶ下がってきたので飛躍的に使いやすくなり、プロジェクトでも'日常使い品'としてぐいぐい食い込んできています。が正直、各社それぞれの色味やとがった配光、価格などを考えると全体のバランスの中ではまだ'暴れ馬'のように扱いにくく手のかかるアイテムでもあります。

今回は特に光の質が問われる美術館。展示照明においては作品保護とともに重視される演色性がハロゲンに劣り、特にR9(赤味)の見え方が弱いLEDを選択するにあたって、非常に神経を使いました。

hoki_graph.gif左図は、様々なLED素子を比較検討し、そのいくつかを演色性のグラフにしたもの。このようなデータを踏まえ、今回はコレクションのオーナーである保木氏、画家の先生方、画廊関係者、設計者、そして我々が一堂に会して実験を行うことができました。

従来のハロゲンスポットと比較してLEDの光はどうか、展示照明としての光に堪えうるか、弱点であるR9の見え方は・・・。実際にお借りしたコレクションを照らして検証しました。

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結果、ハロゲンと比較しても充分に納得のゆく光として、性能表では2番目に評価の高かったLEDを使用することに決定しました。性能表で一番に優秀な光が一番に美しい光とは限りませんでした。人の視覚・感覚でナチュラルと感じるもの、受け入れやすい光というものを優先しました。

公共性の高い建築や空間の設計においては、やはり万人が納得できるような理屈や数字でコンセプトの脇を固めながら、プロジェクトを進行せざるを得ないこともあります。(実際ほとんどがそう。)しかし、その光に身を浸したとき単純に心地よいかどうか、美しいと感動できるかどうか、シンプルで一番強い判断基準がそこにあるだろうと思います。今回は判断をすべき関係者がコンパクトにまとまり、それも「美」に対しての造詣の深い方々と共に新しい光源の選択を決定できたことは、非常に幸運なことでした。LEDの可能性をさらに広げる試金石になり得たと感じています。

 

 

■器具詳細など...

LED器具はφ64mm、天井の孔は空調の吹き出しなど設備も兼ねています。配光は1/2ビーム角16度、器具は45度まで傾けて深く絵画を照らすことが可能です。多灯で、また細かに調光を入れて照らしているため、絵画面の光ムラや額縁の影を解消しています。画家先生の立会いの下で、細かに光を重ね最終調整を行いました。

器具総数、7300台!!配灯図の作成は目が乾きましたが、現場でエーミングをしてくれた方々の苦労はそんな比じゃありませんね。先端にレーザーポインターのついたエーミング用機器(優れもの!写真右下端)も作って、とてもテキパキと調整していただきました。

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これは現場の様子。無数の孔から配線が、毛穴のよう・・・。

人の産毛や表皮の皺まで写し表現する細密画の世界と、空間自体が呼吸しているかのようなこの景色、・・・この美術館は細密画のためにつくられた、スペシャルなギャラリーなんだと実感した瞬間でした。

 

とにかく絵画に圧倒されます。建築にどきどきします。是非訪ねてみてください。

(早川亜紀)

 

 

※ライティングフェアのHPにて連載中のコラム「光のデザインレポート」にホキ美術館が語られました。こちら

 

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